CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)について

CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)について
最近、ギリシャ国債やイタリア国債CDSスプレッドが上昇していて、ヘッジファンドCDSを売買して利益を上げているという内容のテレビ番組を見ました。ユーロ圏(もしくは米国?) のヘッジファンドギリシャ国債CDSを購入し、価格がつり上がったところで売り抜けるというような内容でした。
まず、簡単にCDSを説明しておきます。(ギリシャ国債を例えとします。)
CDSとはデフォルトに対する保険のようなものです。
ギリシャ国債保有している人は、満期まで保有すればその金利を得ることができますが、途中でギリシャ国債がデフォルトを起こしたらどうなるでしょうか? もちろん手持ちのギリシャ国債は紙屑となってしまいます。
そこである保険会社が登場し、「ギリシャ国債がデフォルトしたら満額返済しますから、その分保険料を納めて下さい」と言う保険を売り始めます。これがCDSです。ギリシャ国債を購入した人の中には、多少費用がかかるとしても、貸し倒れリスク(ギリシャ国債のデフォルト)は回避できますので、CDSに申し込みます。
当然、ギリシャ国債金利収入よりも低い価格でなくてはなりません。普通に考えれば、ギリシャ国債金利収入の少し下の保険料となり、ギリシャ国債金利が高くなれば(デフォルト懸念が高くなれば)CDSの保険料率もギリシャ国債金利収入を超えない程度に高くなります。
すなわちCDSの価格が上がるということは、ギリシャ国債のデフォルト懸念が高まるということです。
ここまでなら、ただの保険商品なのですが、実はギリシャ国債保有していない人が、CDSを購入しているとしたらどうでしょう。ギリシャ国債を持っている人が、保険として(上限を設けて)CDSを購入するならともかく、関係のない人がギリシャの破綻を見越してCDSを購入し、その残高かが膨れ上がっているとしたら…。
この状況でギリシャが破綻したら、保険会社にはCDSの残高分の債務が発生することになり、その額はギリシャ国債の残高の数倍に上ることになります。もともと、CDSを売っている側も「まさか破綻しないだろう」との思惑から売っていますので、実際デフォルトした時の保険金など用意できるはずもありません。
さて、実際の話に戻ります。
ギリシャを破綻させようとした時、ユーロから脱退させてしまえば良いのですが、実はそう簡単に破綻させられない事情があります。ギリシャ国債の破綻処理だけなら、ギリシャ国債残高である45兆円(ギリシャGDPが約30兆円で、その150%くらいの国債発行残高があるので、45兆円程度?) を紙屑にしてしまえば終わりなのですが、ここにCDSが絡んできます。
実際は、ギリシャ国債のデフォルトをお金儲けにしようとCDSのみを売買しているため、残高が良く分からなくなっているのです。その額は、軽くギリシャ国債残高を超えるでしょう。
すなわち、ギリシャ国債をデフォルトするための損失を45兆円と考えて破産させても、実際はその何倍ものCDS損失が伴うと考えられます。
さて、誰がギリシャ国債を買っているかというと、
National bank of Greece(ギリシャ)13.2%、Eurobank Ergasias(ギリシャ)9.0%、Piraeus(ギリシャ)8.0%、FMS(ドイツ)6.3%、BNP Paribas(フランス)5.0%、ATE bank(ギリシャ)4.6%、Alpha Bank(ギリシャ)3.7%、Dexia(ベルギー)3.5%、Hellenic Postbank(ギリシャ)3.1%、Generali(イタリア)3.0%、Commerzbank(ドイツ)2.9%、Soiete Generale(フランス)2.9%、Marfin(ギリシャ)2.3%、Groupama(フランス)2.0%、CNP(フランス)2.0%、AXA(フランス)1.9%、Bank of CyprusBOC.CY(キプロス)1.8%、Deutsche bank(ドイツ)1.6%、LBBW(ドイツ)1.4%、ING(オランダ)1.4%、Allianz(ドイツ)1.3%、BPCE(フランス)1.2%、Ageas(ベルギー)1.2%、RBS(イギリス)1.1%、DZ Bank(ドイツ)1.0%、Uni Credit(イタリア)0.9%、Intesa Sanpaolo(イタリア)0.8%、HSBC(イギリス)0.8%、Erste(オーストリア)0.7%、Munich Re(ドイツ)0.7%、Rabo bank(オランダ)0.6%、Credit Agricole(フランス)0.6%、KBC(ベルギー)0.6%
となっています。
これら銀行がCDSを購入しているとは限りません。もちろんこれらの銀行は、ギリシャがデフォルトすればかなりの損失が発生することになります。上記のDexia(ベルギー)はすでに破綻してしまいました。
そして、CDSを購入している金融機関やヘッジファンドが市場を混乱させ、売っている金融機関や証券会社などは支払いができず、上記の銀行以上の債務が発生することになります。
なので、ギリシャ国債が破綻すると困るのは、なにもギリシャ国債を購入している金融機関だけではなく、それ以上にCDSを売っている証券会社などが困るわけです。
最後になりますが、ギリシャ国債のデフォルトでもその発行残高の数倍の損失が発生するわけです。何度も言いますが、ギリシャの後にはポルトガル、イタリア、アイルランド、スペインが手ぐすねを引いて待っています。
ちなみに、CDSの売買には当然米国の金融機関が思いっきり絡んでいるはずなので、米国もただでは済まないでしょう。また、これらはCDSサブプライム同様、切り分けして各種金融商品(投資信託など)に含まれている可能性が高いため、日本の大手証券会社やメガバンクも損失を被ることになると考えられます。
今日の相場
USD/JPY 77.53
EUR/JPY 103.73
金(国内小売)  4526円/g
白金(国内小売) 4077円/g
ファンダメンタルを考えてもUSD/JPYは押し目売り、株は下落という方向に変わりはないと考えています。目先の米国雇用統計の改善、米国株価の上昇などに惑わされてはいけないのではないかと思います。貴金属は更なるユーロ不安から下落を予想しています。(ちなみにおいらは、金の先物でロングを抱えていますのでこんなことは言いたくないのですが…。)
押し目ではUSD/JPYやEUR/JPYを売り、株や貴金属は下落しそうなので今は様子を見て、下がったところで徐々に買い増していきたいと思っています。
他のブログやアナリストの意見は、大抵リスク選好に傾いているようですが、おいらはまだ時期尚早と見ています。
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